八月は風の葉月/小池房枝
鱗めく細波 疾風がひゅんひゅんと川よりも速く駆け下るので
ひゅんと風がたちカーテンがふわりとし夕立が来ました 雨と屋根との
いかづちで空をこつこつ叩き割り孵化せんとしてるものは何かな
大丈夫、世界はちゃんと美しい ときにどんなに理不尽でもね
この雨は水脈のとぎれた水溜りに間に合わなかったそうです合掌
洗っても磨いても落ちない瑕ひとつ青天高く白い三日月
白いガーゼを千切らずそっと出来るだけほぐして広げたような絹雲
久しくて初めて見聞きするような雨の風景 遠近(おちこち)の音
越してきたアパートここは秋立ちて後に夕日が部屋を訪なう
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