ペルーで初めて降る雪/月山一天
が
そのまま雪に倒れて、雪で顔をぬぐうようにすすり泣きを始める
僕は
彼女の
目の端に輝く涙が
なぜか
懐かしいので
あの男の事を思い出す
パティーはこの男の為に日本に来た
ペルーで知り合って、恋に落ち
日本で一緒に暮らすはずだった
でも男は妻子もちであった
仕事もやったり、やらなかったり
その男はペルーから来た女の子3人と一緒に
パティーを小さなアパートに押し込んで
都合の良い時だけ彼女に会いに来た
僕はパティーを雪から起こし、雪を払ってやる
雪で濡れたのか、涙で濡れたのか
したたる水滴もぬぐわずに
雪を初めて知った手で
ピースをしてみて 笑うから
彼女には
大きすぎる涙が
ボトンと落ちた
あれから3年
僕はバスの中でパティーを見かけた
髪の毛はまだ鳥の巣のようだが
かなり大きくなっていた
「条件のいい彼氏なんて、今の私には贅沢なの。」
そう名言して去った彼女
知っているだろうか
今年のクリスマス
ペルーでも雪が降るそうだ
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