祈り 〜八月生まれの母へ〜/銀猫
いても
金魚鉢の、
ああ、夜店で掬った金魚、
それくらいしか固まりの泳いでいない、
すいとんしかなかったこと
疎開っ子と言われ
いじめられた悔し涙
あなたは
もう子どもを
やり直しているのですから
辛いことは
忘れてしまって下さい
代わりに
あなたから聞かされた、
怖い怖い戦争のこと
わたしがここに
ね、書いておきますから
どうぞもう一度
少女に戻って
れんげ畑で
花かんむりを編んで、
編んで
それから
白いドレスのお嫁さんになって
わたしを産んでくれた、
それだけを覚えていて下さい
怖い人はもう来ないから
日本の国の、
みんなと、わたしが
あなたを怖い目には遭わせませんから
この頃は夜まで蝉が鳴いていますね
黒い八月には
どうしていたのでしょう?
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