「沈黙」についてのノート--ヴィトゲンシュタイン、G.スタイナー、石原吉郎の「沈黙」/N.K.
ここ1年余り、自分は沈黙について思いを巡らさざるを得なかった。端的に言って震災によって亡くなられた方々を直接の被害が軽微であった場所から安易に話すことに抵抗を覚えたからだ。「語りえぬものについては人は沈黙せねばならない」という場合のヴィトゲンシュタインの「沈黙」についてのあの結論が、即座に思い浮かんだ。それから、詩人・石原吉郎が、驚くべきことに、詩における言葉はいわば沈黙を語るためのことば、「沈黙するための」ことばであるといっていいと述べて、詩を定義しているのに出会った。さらにG.スタイナーの「言語と沈黙」のはしがきで、訳者の由良君美が著者をを踏まえて「言語が優位を占めていた歴史上の時代から・・
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