渦の中にて/岸かの子
 

現実が見えない速度で流れゆく
見えずとも流れゆくのは
時間と河の佇まい
喉を切り裂く
その 刹那
声にならない
悲鳴と絶望の渦の中に
また 流されてゆく

小さな小さな ただ
女であること以外に
私の結晶は固まらず これから

流れゆく

生まれ変わるなら
輪廻転生があるのなら
深い海の底に眠る貝になりたかった
女の威厳は爪の先にもとどまらず
こうしてまた懺悔を繰り返す

生きて 生きて
生き抜いたら
もう一つ 死ぬ前に
望みを叶えてくれないか
こと切れるまえに
三千世界と現実の狭間の際に

貴女の傍で生きていける女に生まれ変わらせてくれ、と


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