花一輪/HAL
 
あたしはまだあたしの咲く場所をみつけられずに
風のなかを漂っている
まるで帆を失った帆船のような気分で
風まかせで漂っている

どんな花を咲かせようと若い頃から想いつづけてきたわ
それなら適当な大地に舞い降りて
そこに根をはって適当な雄蕊が蜂に乗ってくるのを
待ってればいいのよと
彼女らしくない花を咲かせた友だちは言う
さらに花のいのちは短いのよと諭すかのように言う

でもあたしはあたしの想う花を咲かせたい
随分と色んな大地も森のなかも捜してきたけれど
やっと分かったことがあるの
結局あたしが咲かせたい大地をみつけるのに
安全な野原や山の中腹を示してくれる標識なんて
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