山のもよう/明時 樹
長い時間がつくった
岩の固まり、山のもようだった
それはとても静かな時間で、
隣にいる人が誰だったか、ふとわからなくなるくらいの
年月の詰まったギザギザ
波の穏やかな水面のまん中にある
立て札を読んでみようとこころみて
読めなかった
できるだけ、音を立てずに呼吸をしようと思った、
いくらかの時間が過ぎ
隣にいる人が誰だったのかを思い出したころ
「いこう」と声がかかり、その場をゆっくりと去った
地面がじゃりじゃりと音のするのをききながら
あとどれだけの時間、隣の人のことを忘れないでいられるだろうと思った
私は、すこしも化石になれそうにないけれど
隣の人は、道しるべみたいに大きな体をしていて
さらさらの砂になるまでのあいだは、
見失わずにすみそうだった
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