山のもよう/明時 樹
 
長い時間がつくった
岩の固まり、山のもようだった

それはとても静かな時間で、
隣にいる人が誰だったか、ふとわからなくなるくらいの
年月の詰まったギザギザ

波の穏やかな水面のまん中にある
立て札を読んでみようとこころみて
読めなかった
できるだけ、音を立てずに呼吸をしようと思った、

いくらかの時間が過ぎ
隣にいる人が誰だったのかを思い出したころ
「いこう」と声がかかり、その場をゆっくりと去った

地面がじゃりじゃりと音のするのをききながら
あとどれだけの時間、隣の人のことを忘れないでいられるだろうと思った

私は、すこしも化石になれそうにないけれど
隣の人は、道しるべみたいに大きな体をしていて
さらさらの砂になるまでのあいだは、
見失わずにすみそうだった
戻る   Point(2)