万物抽象詩/黒ヱ
 
空蝉の羽化

濡れた真白の色無き翅 

薄く育つ 渇き 鋭く澄めば

「もう総ては 君のものさ」


誰が為に生まれ 誰が為に渡す輪廻か

背後で延々と燃えている 日輪に

その身を すり減らし 焦がしながら

「君に会いたい 今 会いたい」


道行き交う人々に叫ぶが 怪訝に仰ぎ 行き過ぎる

裏返しにして 崩れる手前

地に埋める その先に

何を願って 何を想って


「大空で 舞い 鳴いて 疲れてさ」

今も変わる事も出来ずに 今も

また生まれ また響き

また堕ちる


「繰り返し 繰り返す だが それでも生きている」






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