その白い夏/ルナク
 
左手は隠しておきます。夏薔薇を二十万色塗り分けるまで


暗室でうずくまる時に聴こえてきた君の言葉はふりそそぐ陽だ


「陽にあたれ遮るもののなにもない高原にたて夏草になれ」


SHINE!草に花にアゲハに木々に背に沈むこころに荒むこころに


玄関にゆりが三輪咲きました。ほっておくのでやがて枯れます


反響が返らぬほどのたかぞらへ夏をつきぬけ鳴る白い鐘


誰ひとり知るひともいない海岸で喧騒の間の波を見ている


青空をたべてムクムク伸びてゆく入道雲の大人びた顔


勝手戸の前にて朽ちて干からびるタイサンボクの白かった花


昔なら受話器の色に救われた 白いテレホン鳴るあてもなし


カシス、カシス、カシス、カシス繰り返し叫んでみても霧は晴れない


白い夏いつかすぎれば白い秋。人はこうして生かされていく













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