悟り/HAL
 
ぼくは麻酔類の効かないからだのようだ
25歳の時に盲腸の手術でそれを知った

局部麻酔なのにいつまで経っても
まったく麻酔は効きはしなかった

オペの開始を待っていた医師は
業を煮やして頑健な看護師を招集した

集められたのは5人の厳つい女性看護師
彼等は柔道の心得があるかの様に

ぼくを羽交い締めにして医師に合図した
見事な程にぼくのからだは動けなかった

そのぼくの腹をまずメスで医師は切り裂いた
そのとき知ったのは良く切れる刃物は痛くないこと

でも手術室の空気はとても暖かかったので
ぼくの腹にその暖気が入ってくるのが分かった

眼の上にあるオペ・ライ
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