段々と/千月 話子
 
花占いをする少女の背中から
日向の匂いがしたりして
指先からこぼれる花びらがオレンジで
昨日降った雨の湿土を
温かく変えて行くのは
その答えが「イエス」だからなのでしょうか

お幸せに 少女よ
木漏れ日がひとつ落ちてきたので



高架下で「バカヤロー!」を
電車の轟音に乗せて旅に出した少年の
怒気は地の果て
終着駅の凍る湖に放られて
たった十センチ四方溶かして消えた
下り普通電車がのんびりと
「君の怒りなんてこんなもんさ。」と
歌うように走り去ったのは
君と君が笑い合った午後三時

穏やかな少年よ
今日初めてマフラーを巻いたので



高い屋
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