岩田宏詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
するためには、憑かれる者であった詩人が、憑く者、積極的に対象へ乗り移るものにならなければいけない。(「演劇性について」より)

 岩田が留保しなかったのは、詩を書くということ、歌うということです。詩を書くべきか書くべきでないか、歌うべきか歌うべきでないか、そのような迷いは岩田には感じられません。そのような迷いにおいて受動的に歌ってしまうのではなく、自ら積極的に、神・自然・霊感・新年・社会科学に乗り移っていき、迷うことなく歌うのです。
 ところで、歌うという一点においてのみ留保せず、しかし歌うことをめぐる様々な問題について留保せざるを得ないというのは仕方のないことでしょう。サディストとして積極
[次のページ]
戻る   Point(6)