10セント/Ohatu
 

 街の大通りには貧困が陳列されている。
 それにはタイトルは無く、
 表情はいたって量産的だ。

 小銭入れを持たない僕は、
 あまりたくさんの小銭を持ち運べず、
 道行くホームレスにあげてしまうことがある。

 この瞬間、
 数十人の中から一人を選び、施しを与えるという
 事実が生まれる。ただの人間が、ただの人間の中から一人を選ぶ。

 そのわずかなお金が何に使われるか、なんて分かるはずもない。
 きっと数十人の中には他より切実にお金を求める人が居るだろう。
 しかし、そんなことは、分かりようが無い。

 無感情に、無作為に、一人を選び、札財布のふたを閉める為
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