光に近く/木の若芽
 
「光に近く」
          木の若芽


いつもとちがう道から帰ろう
10分遠回りだけど
いつもよりたくさんの木が見れる道から
風が凪ぎ遠くの木の梢の先端まで
くっきりシルエットになり網膜に映る
冷たい夜気がおりてくるなか
わたしのからだのなかにも木のシルエットを映す
魔法めいた幻燈があかあか燃えている
その光をだいじにだいじに
木の見える道を歩いて帰ろう

光をもたない人なんていない
輝かない人なんていない
かすかで 目立たず ほのぐらくても
きらめき 明るく さかんにも
それぞれのしかたで光っている人々を
地下鉄の中 ビル街 コンビニエンスストアで
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