萩尾望都私論その7 私の赤い星3「生めないクロバ」/佐々宝砂
 
女扱いされたことのない地球人の女をこういうふうに扱うのは、どんなもんでしょうね、場合によっては危険が伴うよね、と私は思うのだが、火星人のクロバは女っぽいよと言われて割と素直に喜んでいる。まあ、見ようによっては可愛い。つまりこのひと、ジェンダーがどうあれ、セクシュアリティはおそらくふつうに女だ。

火星を破壊しようとする異星人たちに抵抗して、クロバは叫ぶ。

「クリュセを失ったら オレたちは種を断たれたと同じだ」
「新しい星はない オレたちは終わりだ!」

クロバが「種の存続」をこれほど強く意識するのは、クロバが女だからではない。クロバが火星人だからだ。男であれ女であれ、火星人にとって「種の存続」に勝る重要事はない。だからこそ、男であったヨダカは、なんのためらいもなく女になってしまうのだ。

というわけで、続く。

クリュセは火星の洞窟、火星においてはクリュセでしか子どもが生まれない。地球人から生まれても、クリュセで生まれたら火星人になる。世代を経るごとに超能力が強くなるので、火星人は世代を重視する。

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