恋をしていた/永乃ゆち
なないろのおもちゃのくにへつれてって いっしょう恋に傷付かないよう
つま先を並べたベッドに月明かり優しく熱を帯びてゆく夜
潔く決意することいきものは愛することで生きていること
お互いがお互いの為生きている コールタールに花の咲く時
『元気です』書いては消したしわくちゃの便せんに滲む細やかな嘘
誰にでも許されるべきためらいと弱さがあって世界が回る
あの人が私をたった一度だけ呼び捨てにした それがお守り
初恋は月が欲しいと泣きじゃくる子どものような淡い理不尽
生きていることに満足したいから泣いても泣いてもまた恋をする
あなたとの出会いはきっとパンドラの函の最後の希望なのです
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