言葉拾い/灰泥軽茶
 
うすっぺらな私はとにかく
なんでもいいから
そこらじゅうに溢れ落ちている言葉を拾う

うすっぺらな
紙に書かれているセリフを
ぺろりと舌に乗せて
呑み込む

うすっぺらな
スクリーンに映し出されるセリフを
ぺろりと舌に乗せて
呑み込む

うすっぺらな
リズムからこぼれるセリフを
ぺろりと舌に乗せて
呑み込めば安堵する

うすっぺらなうすっぺらな
街で人々が交わす
前後もないセリフを
ぺろりと舌に乗せて
呑み込めば
体の奥でこだまする

そうして
幾重にも重なった言葉は
だんだん厚みを増し
喧騒の中
変化を繰り返し
ある日突然
さも当然のように私の言葉となって
発せられるので
ときどき怖くなるのである


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