土砂降り/HAL
めて出ていった
もうわたしに微笑みかけることはなく
もうわたしに一声もかけることはなく
あのひとは出ていった
ひとつだけわたしは訊きたかった
あなたのそのバッグのなかに
わたしの心は入ってないのと
きっと入ってはいないよのね
それならわたしの心はどこへ消えたのかしら
もう見つけることはできないのかしら
それでもわたしは哀しみを知らないのかしら
それでもわたしは淋しさを感じないのかしら
どうしてこんな夜に
雨なんか降ってくるのと想いながら
あのひとは傘を持たずに出ていった夜に
なぜ雨なんか降ってくるのと想いながら
わたしは土砂降りの雨のようには泣けない
これほど土砂降りの雨のようには泣けない
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