傘の中/永乃ゆち
 

雨の日に

モンシロチョウは何思う。

どこでか弱い羽休め

どこで蜜を求めるの。


私は独り

傘の中。


蝶のようには飛べないし

蛙のように鳴けもせず

ただひたすらにあの人を

思って傘をくるくると。


私は独り

傘の中。


彼女のようには泣けないし

彼女のようには笑えない。


あの人の掌も横顔も

全部彼女が連れ去った。



雨の日に

モンシロチョウは何思う。


私は独り

あの人思い

傘の中に縮こまる。



そうして傘をくるくると。

寂しく傘をくるくると。
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