光る影杖 /砂木
 
赤い雲が青空に溶けていく
さなぎの上に 初めて羽をひろげる鬼ヤンマ
透明な四枚の羽と 複眼に陽が射す
洗濯ものを 外に干す

水辺の近くに立つ 銀の洗濯棒が光を集める
風波をかぶる池の石 尾を揺らす魚
水面に 棒にこもった光が映り 
真直ぐの棒の影と共に 波立ち揺れる

光の影は 光 くねくねと風波の思うまま
削られても流されない石 波を避け潜る魚
杖のように立っている銀の洗濯棒
すべての影だけが 水面では波立ち
けれど ぶつかりあわず 虚を成し

揺らしてゆすって 風は水を羽のようにとばす
水は揺り返し 幾重にも風を起こす
石も魚も そこから溢れる空気を呼吸し
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