草原/瀬崎 虎彦
 
二心抱く馬のひかがみ斬り
草原に立つ人の輪郭のすずしさ
鈴が鳴るように人影倒れて
陰翳の底の所在無さはセフィロスに跨る

おおおと鳴る風の行く先は
電線の彼方 あるいは
支配のオルガンの左舷
道知るものなく手を切る紙の乾き

骸に添えたる花のあでかにして
水滴る未曾有のオレンジの落日
果実に礼を払い釣を受け取る

束縛と禁忌と高揚とが
一塊になって雪の野に転ぶ
沈黙の代価を誰か知らないか
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