真緑の水/永乃ゆち
 



真緑の水に素足を浸けているみたいだ


それは遠い日の御伽話


純粋だけで生きていけると思っていた頃


何にも縛られず


何からも独占されず


自由に笑えていた幼い日の記憶


思い出すのには私は大人になり過ぎた


笑いたくない時に笑い


理不尽に頭を下げ


一週間が過ぎてゆく


だからどうか


週末だけは正しくありたい


週末だけはあの日に帰りたい




世の中は理不尽で構成され


純粋さなどは欠片も価値がない


だからどうか


だからどうか


週末だけは


真緑の水に浸って


ただ静かに呼吸がしたい



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