隠れ鬼/つむ
扇風機の前で
アイスキャンディを片手に
あああと言う
気まぐれ
その振動する声が
遠い青空の積乱雲を
かすかに
揺らす
夏
しあわせな抜殻が
あちこちで彫像となっていて
着地点も見いだせないまま
めぐる季節の中に
きりとられている
一人称
どうして
終わるためだけに
大人になるのだろうね
みどりの海原を駆けて行った
野良犬のしっぽの先は今も
胸の奥をくすぐって
やまないのに
明るいだけの気まぐれで
外へ滑り出したけれど
無機質にふりそそぐ虫の声のなか
こうべをたれる向日葵のすぐそばで
自分の影の大きさに
気づいてしまう
あの夏から続いている隠れん坊
鬼はまだ探しにこない
雲なら ただゆったりと
誰かの夏を祝福しに
流れていった
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