時計塔/itukamitaniji
 
めることしかできない



時とともに彼女の体も どんどん弱っていって
あんまし笑わなくなった むしろ笑おうとしなくなった
時計塔の鐘が響いて またひどく不安になる
彼女は耳を塞いで ぶるぶる震えて怯えた

そんなもの無ければ良い 彼女が苦しむだけなら
僕らには不必要なだけだって 彼は夜の街を駆ける
ハンマーにバットに鉄パイプ とにかく何でも良かった
とにかく全部壊したかった 時計塔の頂上に立って 

我も忘れ喚きながら めちゃくちゃに叩きつける
汗まみれ血まみれの両手も お構い無しに
時間よ止まれ時間よ止まれ いつの間にか泣いていた
彼女を苦しませるだけなら こんな音も時間も要らない



そして時計塔は 音を立てて崩れ落ちてゆく
もう1ミリだって動けない 彼を飲み込んで
消えてゆく意識が 完全に失くなる最後の最後まで彼は
彼女の笑顔を祈った もう見れない彼女の笑顔を祈った





何だか今日は騒がしい 街の風景を眺めて
笑わない彼女は いつものように待っていた

いつものように彼が来るのを 彼女は待っている
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