時計塔/itukamitaniji
時計塔
街にはとてもとても大きな 時計塔があった
それは街のどこに居ても 見えるくらいノッポだった
今日も大きな鐘の音が 時間通り町中に響き渡る
誰もが愛すその音が 彼女は大嫌いだった
*
白銀のお城みたいな 病院の部屋で彼女は目覚め
自分が居ない街の風景を いつものように眺める
彼女は時計が嫌いだった だから部屋には時計がない
当然あの時計塔なんて 無くなってしまえば良いって
迫りくる死神が わざわざカウントダウンしながら
迫ってくるみたいで 時々怖くなることがあるのよって
いつも彼女は言っていた その度に彼はいつも
そんなこと言うなよって なだめる
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