家路/HAL
強い雨がからだを叩く
吹く風はずっと向かい風
傘なんてまったく役には立たない
だからさっき橋の上から
激流に放り捨てた
その茶色の濁った水が目指すのは
どの水も同じ所
きみよ俺だってそうだ
きみが暖めてくれている部屋へと
家路を急ぐ家路を向かう
邪魔するものは蹴散らすだけ
とにかくきみの待つ家路へと
とにかく愛しいきみの元へと
俺は歩みを止めない
そこにきみがいるのを知っているから
電気の点いた部屋を開けたとき
きみときみの笑顔が見えるから
俺はずっと灯りの点いていない部屋に帰っていた
足どりはいつも重く誰も待つことのない部屋に
でも俺はきみと巡りあった
同じ時代に生まれたきみに出逢った
その返礼にジーザスにもモーセにも
アラーでも釈迦でもひざまずき
その足を舐めたっていい
俺はきみと巡りあった
同じ時代に生まれたきみに出逢った
それは長く荒んだ俺の人生に
これまで聴いたことのない
美しい音楽が流れはじめたようだった
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