サバ人間/灰泥軽茶
 
昨日の〆サバがあたったのか

朝起きると吐き戻しお腹も刺すような痛み

背中がかゆくてたまらず

爪を立てるとなんだかツルツル滑る

鏡に背中を向けて首をひねると

なんとも綺麗なサバ肌

不安定な恰好でフラフラしていると

サバ肌がキラキラ煌めき目の裏がひくつき

薄暗い記憶が青く瞬く

私は海中を流れる光の渦に潜り

己の使命をヒタヒタと感じクルクル回遊する

そんな郷愁溢れる気持ちになりながら

お風呂に体を横たえ蛇口をひねると

少しづつ水が体を浸してゆき息苦しくなってゆく

だんだん意識は遠くなり

あぁ私もこれで一匹の鯖となり一生を終えるのだな

願わくば照り焼きにして

箸で丁寧にほぐして食べておくれと

感傷に浸っていると

なんだか肩甲骨あたりがスースーしてきて

気持ち良くなってきたのだ

こうして私はサバ人間となって生まれ変わったのだと

ゆっくりのっそり怪人の如く

起きあがり鏡をみると

平凡な私がひとりいた



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