面影/永乃ゆち
 



ひっきりなしに立ち上る

煙草の煙に紛れ込む空想と

時々聞こえる水滴の音


一日の終わりの最後に

どうしても会いたい人の面影


時計の針が刻む

一瞬の躊躇いと諦めと

微かな期待


そして部屋中に立ち上る

どうしても会いたい人の面影


夜が私を連れ去ってくれるのなら

どんなに幸せだろう


愛の為に気が触れるのなら

どんなに幸せだろう


情熱と理性が交差して

愛した人の面影だけが立ち上る


私を苦しめるこの愛は

それでも棄てきれずに小指に絡まっている



煙草の煙に紛れ込む空想と

どうしても会いたい人の面影



どうしても会いたい人の

面影



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