6月1日/永乃ゆち
その硝子の破片は湖の水面のようにきらきらと輝いて
わたしは一瞬夢かと思った
けれどその硝子の破片はわたしに降りかかり皮膚を傷付けた
生温かいものが体内から流れ出し
わたしは自分が生きていることを知った
わたしはわたしを傷付けるものを拒否し反抗し抹殺した
わたしは独立した
1986年6月1日
それはわたしの独立記念日になった
怯えているだけのわたしはもう居ない
耐えているだけのわたしとは遠く離れた
わたしは自分の足で歩き
自分の手で掴み
自分の体で生きて行く事にした
そして自分で呼吸する事を思い出した
もう怖くない
もう恐れない
もう泣かない
今でも過去がわたしを苦しめる時があるが
あの6月1日を思って幾度も誓う
わたしはわたしとして生きる事を
今わたしを守ってくれるものを
一生かけて守り抜く事を
そしてもう二度と
愛を誤解しない事を
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