卒業/たもつ
 
 
百葉箱に住んでいた校長先生が 
退職することとなった 
わたしたちはそれを寂しいことと思い 
お別れの言葉と
鯖を送ったのだった 
美味しい鯖ですね、と 
校長先生は美味しそうに食べた 
校長先生が鯖を食べるところを初めて見たし 
鯖が好きだということも初めて知った 
退職後は海の見える百葉箱に引っ越しをするそうだ 
これから鯖を見るとみんなのことを思い出します
と言うけれど 
わたしたちを見ると鯖のことを思い出すのだろうか 
それとも生きることは 
みんなに等しく辛いことなのだろうか 
遅くならないうちにお帰りなさい 
ということを校長先生は言って 
わたしたちは適宜解散し
卒業を終えた 
 
 
 
 
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