卒業/たもつ
百葉箱に住んでいた校長先生が
退職することとなった
わたしたちはそれを寂しいことと思い
お別れの言葉と
鯖を送ったのだった
美味しい鯖ですね、と
校長先生は美味しそうに食べた
校長先生が鯖を食べるところを初めて見たし
鯖が好きだということも初めて知った
退職後は海の見える百葉箱に引っ越しをするそうだ
これから鯖を見るとみんなのことを思い出します
と言うけれど
わたしたちを見ると鯖のことを思い出すのだろうか
それとも生きることは
みんなに等しく辛いことなのだろうか
遅くならないうちにお帰りなさい
ということを校長先生は言って
わたしたちは適宜解散し
卒業を終えた
戻る 編 削 Point(5)