バス停/さち
 
てくる


 いきなり
 後ろに並んでいた私に缶ビールを突き出し
 「開けてくれます?深爪なもんで。」
 (グダグダめ、深爪か・・・)と余計なことまで知ることになる



 行儀が悪いといえば悪い
 しかし どこか可愛らしかった
 酔った人間はやっぱり無防備だ
 始末が悪いがやっぱり可愛らしい

 バスが来て人が降りるちょっとの間
 開かなかった乗車口の扉をノックしたりしている
 ひどく真面目そうなおじさんに
 「うるさいっ!」と叱られる
 「んあ、すみませーん!」と謝る
 その声がまたうるさいと叱られる


 なんだか面白く眺めている私は たぶん
 ずいぶん歳をとったんだな、と思う
 夜遅く1人でバスに乗ることも
 急に差し出された缶ビールに動じないことも
 酔っ払いをかわいいと感じることも
 真面目に怒ってるおじさんを笑いながら見てることも

 たぶん
 私が歳をとった証拠なのだろうと思う
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