バス停/さち
てくる
いきなり
後ろに並んでいた私に缶ビールを突き出し
「開けてくれます?深爪なもんで。」
(グダグダめ、深爪か・・・)と余計なことまで知ることになる
行儀が悪いといえば悪い
しかし どこか可愛らしかった
酔った人間はやっぱり無防備だ
始末が悪いがやっぱり可愛らしい
バスが来て人が降りるちょっとの間
開かなかった乗車口の扉をノックしたりしている
ひどく真面目そうなおじさんに
「うるさいっ!」と叱られる
「んあ、すみませーん!」と謝る
その声がまたうるさいと叱られる
なんだか面白く眺めている私は たぶん
ずいぶん歳をとったんだな、と思う
夜遅く1人でバスに乗ることも
急に差し出された缶ビールに動じないことも
酔っ払いをかわいいと感じることも
真面目に怒ってるおじさんを笑いながら見てることも
たぶん
私が歳をとった証拠なのだろうと思う
戻る 編 削 Point(5)