エスケープ失敗/ブルーベリー
 
陳列棚を指先で示したものの
どれだったか見当はつかなくて
店員はあの、と困ったように上目遣いした

白い煙なのに何で紫煙だなんて言うのかしら

あなたは透明になっていく

結局レジ袋には自分の分のミネラルウォーターだけが
たぷん、と揺れて 揺らして

会いに行く

白い壁 天使が顔馴染みになった私に
満面の笑みを向ける
サンプル写真のような眩しさで目を灼き
喉を引き攣らせるのも
もしかしたら役割のひとつなのかもしれない

階段を上ったあなたの部屋

透明な壁に笑みのまま立ち尽くす
エスケープを誘ったのはどちらからだったろうか
わからなくなるような

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