strawberry on the radio jam/ブルーベリー
 
海に連れて行ってくれる筈の
君の爽やかな声は
疑問系で終わってしまった
「南へ行きたいのか?」
落胆の周波数に
頷く事を忘れて
ただ見つめあっていた
そのうちにラジオが
波音を引き寄せ始めた

「ほんとうに?」

窺うような君の目を見ているうちに
知らず私は唇をもぐもぐさせた
君の髭は美味しそうで
海も南下計画もどうでもよくなっていた

子供は2人居て
それなりに恐怖と安堵を繰り返す日々

「南へ」

バルコニーに招かれた風が木々を揺らし始めて
波音は近くの浜茄子のざわめきに変わる
浜茄子? いいえ、まだ早い。 ―苺、
緑蔓延るコンクリートの境界線
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