さんかくのかかと/灰泥軽茶
段差段差
すらりと綺麗な人が
高いヒールでぐにゃりとごろりところげた
うしろを歩く私へ
勢いよくかかとが飛んできた
私はちょうど
小ぶりで可愛らしい
さんかくのかかとをキャッチし
痛たたたっと
振り返り苦み笑いをこぼす彼女へ
軽く山なりにスローイングすると
ひゅういひゅういと
美しい音を流しながら持ち主の手へ返っていった
すると彼女は腕の良い職人のごとく
さんかくのかかとを
こつこつとコンクリートに叩き
音をたしかめ
十徳ナイフのようなものを取り出し
手際よく元の場所へ嵌め
締めなおすと
闊達のいい音を鳴らしながら去っていった
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