タケイ・リエ小論/葉leaf
 
 タケイ・リエの詩集『まひるにおよぐふたつの背骨』は、詩を書くときの自我、あるいは詩を書くときにかかわらず、人間が本源的に備えている自我の在り方について、詩という形式の持つ直接性を用いて我々に訴えかけてくる。ところで「自我」とは何だろうか。
 近代において個人の自我が確立したとき、それは、自己同一的で、連続的で、統一的なものとしてとらえられた。「自己同一的」とは、自らが大きな変化をしないということだ。自らに多少の変化があっても、その変化を自らに帰属させることができるということだ。つまり「自己」という枠の中に常に自己が収まっているということである。「連続的」とは、途切れないということだ。途中で消え
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