改悛と葡萄・悲歎の幻視/高濱
 


ああ、主よ、葡萄酒製造樽の中の数学者よ、
黄金比の幾何学の理想形の球形の塵よ、
此処彼処に蹲る地獄の岩石の似姿よ。
私は殺されて、夢を見ました。
抉れた両目の花が咲き綻ぶ滝となるのを見ました。
聖人達の骸骨が法衣を被り回転するのを見ました。
私は悪でしょう、人の言葉を操る恣意でしょう。
天罰は下り、浮遊する身となり、消えてゆく、
暗澹の顔を覆す花粉の飛散する五月の歩哨の長銃でしょう。




あなたの死を悼みます、主よ、四辺形の視線よ。
断片化した記憶の中の百合の花は青色でした。
ドアから半身を滑り込ませ、奇跡の十字架を運ぶ、
丘陵に多くの銃剣が突き立っています。
精神病院の中庭に大きな銀杏の葉が落ちています。
発狂した青年の旅行鞄には夜が詰まっていました。
それが溢れ出すと黒い洋燈の光が覆ってゆく市街地に、
青み掛った羽根が降り、橋梁に敷き詰められた骸骨が、
次々と河へと流れて、顔の表面を覆ってしまいます。


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