「夜があまりに長いので」/ベンジャミン
 
てしまうのを
それこそが悲しいと思います
なぜなら
あれはそう
たしかに悲しいと名づけたものの
ほんの一部に静かに咲いている
一面の紫陽花の中を
月あかりさえ届かないこの場所で
ただひとみを閉じるだけで
思いおこせるのですから
夜はあまりに長いので
なのにその紫陽花の中を
いつまでも歩いていたいとさえ思うのです

夜があまりに長いので
その夜が何度となくおとずれても
いつまでも歩いていたいと願うのです
それがたとえ悲しいと
自分のこころがわかっていても
あれはそう
けして枯れることなく
ずっとずっと咲きつづけてくれるのですから
少しずつ花色が変わってしまうとしても

長い夜がくるたびに
いつも咲いたままで待ってくれているのですから
 
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