「夜があまりに長いので」/ベンジャミン
てしまうのを
それこそが悲しいと思います
なぜなら
あれはそう
たしかに悲しいと名づけたものの
ほんの一部に静かに咲いている
一面の紫陽花の中を
月あかりさえ届かないこの場所で
ただひとみを閉じるだけで
思いおこせるのですから
夜はあまりに長いので
なのにその紫陽花の中を
いつまでも歩いていたいとさえ思うのです
夜があまりに長いので
その夜が何度となくおとずれても
いつまでも歩いていたいと願うのです
それがたとえ悲しいと
自分のこころがわかっていても
あれはそう
けして枯れることなく
ずっとずっと咲きつづけてくれるのですから
少しずつ花色が変わってしまうとしても
長い夜がくるたびに
いつも咲いたままで待ってくれているのですから
戻る 編 削 Point(2)