狐の嫁入り/永乃ゆち
けた
火は一晩中燃え盛り家屋を全焼させ人間すら焼き尽くした
夜が明け空は晴れ雨がしとしと降っていた
(あぁ、そうよね、これが狐の嫁入りよね)
白い狐の面を被っていたのは私だ
哀しく嫁いでゆく
子を抱いて虚ろに焼跡を見ていた私はそのまま連行された
最後まで子には何もしてやれなかった
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
本当に愛したあの人に会いたかったがそんな資格はないだろう
私は自分のした事を一生かけて償ってゆく
けれど
懺悔の気持ちは持ち合わせていない
思う事と言えば自分の人生への嫌悪感
何故逃げ出さなかった?
何故拒否しなかった?
言われるままに流されて自分で自分の首を絞めた
此処から出たら林の奥へ行こうと思う
白い狐の面を被って
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