「HELP」/ベンジャミン
真昼の高架下
薄暗い小さなトンネル
壁面にスプレー缶で書かれた
HELP
よくあるいたずら書き
誰に向けられたわけでもない
行方を持たないメッセージ
どうせなら
HOPE
目的を失ってから
理由なく前へ進むため
ただの自己暗示なのだとしても
なのに
HELP
反対側の壁面にも
見上げれば天井にも
はっとして見下ろした足元にも
大きさも色もことなる
無数に書かれた
HELP
HELP
HELP
その中には
叫ぶこともできずに
自分が書いたものがあるのかもしれない
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