帰郷/和田カマリ
 
その昔人間の
手付かずの丘だった
僕の街には
タテハ蝶がやって来る

その中でも特に
僕の家の玄関の
植え込みの低木に

イチジクの実のように
群れてじっとしている
彼等が悲しい

辛い思いをして
故郷に帰ってきたのに
待っていたのは

冷酷な僕による
冷たい水遣り

錆びのように
濡れた羽根を
交差させて
あわてる

とりあえず
行き場所も
無いだろうに
飛び去る
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