彼女には赤いドレスがよく似合う/
只野亜峰
彼女は生まれつき右手に銃を握っていた
やがて彼と出合った彼女は
左手で彼の手を握り
右手で彼の心臓を打ちぬいた
彼の体を突き抜けた弾丸は
二人の暮らす小さな部屋の
白い壁に黒い歪を残して
全てが暗い海に飲み込まれる頃には
彼女の柔らかな唇が
彼の左の掌に
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