変な癖/小川 葉
ことを怠ったため、疫病にでもかかってしまい、ひどい目にあった経緯があったに違いない。
そうしてDNAに刻まれた、かつてのそうした反省が、現代の私たち親子に、そのような変な癖を残したのだ。
子孫を安全に残すための、自己防衛的な、行為としても。
幾度となく続いてきた、世代を越えた、貴重な化石のような変な癖。
ドアノブに触れると、手の匂いを嗅いでしまう、私と息子。私たちは、ものに触れると、自動的に、体が動いてしまう。
やっぱり同じだね。と笑いながら、息子と同じ癖を共有している、そのことが、理由もなくおもしろい。
そうして今日も二人して、ものに触れては手の匂いを嗅いでいる。生きていることが、変な癖であるかのように。
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