いびつ/永乃ゆち
ぬかるみに寝そべって見たお月さまは
丸いというより少しいびつな形に見えた
生涯の伴侶と決めた人を差し置いて
愛する人を想う気持ちに似ている
いびつ
この想いが成就する事はないけれど
愛してしまった以上後には戻れない
叶わぬ思いに涙する意味など
きっと無いに等しい
いびつ
鏡に映った私の顔は
日を追うごとに歪んで行く
背徳と情熱と恋情と嫉妬に狂っている
独り息もできないまま
いびつ
太陽を直視できない愛などは
あってはいけないものだと人は言う
明るい道を背筋を伸ばして歩けない恋などは
邪道だと皆は言う
いびつ
私はいびつ
何者にもなれないままに
愛を着地させる場所も知らずに
歪んだ頬で笑う
引き攣った目尻に涙を溜める
本当はただひっそりと
素直に愛したいだけ
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