いびつ/永乃ゆち
 





ぬかるみに寝そべって見たお月さまは

丸いというより少しいびつな形に見えた

生涯の伴侶と決めた人を差し置いて

愛する人を想う気持ちに似ている

いびつ

この想いが成就する事はないけれど

愛してしまった以上後には戻れない

叶わぬ思いに涙する意味など

きっと無いに等しい

いびつ

鏡に映った私の顔は

日を追うごとに歪んで行く

背徳と情熱と恋情と嫉妬に狂っている

独り息もできないまま

いびつ

太陽を直視できない愛などは

あってはいけないものだと人は言う

明るい道を背筋を伸ばして歩けない恋などは

邪道だと皆は言う

いびつ

私はいびつ

何者にもなれないままに

愛を着地させる場所も知らずに

歪んだ頬で笑う

引き攣った目尻に涙を溜める

本当はただひっそりと

素直に愛したいだけ
戻る   Point(2)