私/永乃ゆち
 
私は寂しさを知らない
寂しさを知るには温かさを知らなければならないから

温かさの中にあってそれを失った時
初めて寂しさを知る事になる

私は温かさを知らない


優しい人たちを遠ざけて生きてきたのは
それに慣れてしまう自分が怖かったから

柔らかさの中にあってそれを失った時
初めて苦しさを知る事になる

私は苦しさを知らない


ただひとつ言えるのは
私には喜びも安心もないという事

そして必要最小限の愛情さえ
私は持ち合わせていない

あの人を見て眩しく思うのは
自分には到底持つ事のできない煌めきを
そこに見つけたから

それを愛と呼ぶな
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