蟻の巣/灰泥軽茶
空に向かって高く
超合金製の蟻の巣が
渦巻き状に伸びている
無機質でのっぺらぼうの蟻の巣も
夜になれば
綺麗に画一化された部屋には
優しい灯りが点り
街を照らす
私はとぼとぼとその蟻の巣を眺めながら
ぐるぐると誰もいない街を歩いると
どこからともなく空白の遠吠えを耳にする
やがて煌々と光る駅に辿り着けば
券売機や時刻表
線路もなくなっていることに
はてどうするかと
ぼんやり遠くでちかちか光る蟻の巣を眺めていると
地面が大きく波打ち
巨大なムカデが勢いよくバウンドしながらやってきて
私は勢いよく呑み込まれ
深い森の中へ連れ去られる
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