あたたかい雨/nonya
生温いラブソング
みたいな雨が
無骨な傘を叩く
手頃なセンチメンタル
みたいな歌が
鳥肌にまといつく
南風に押されるままに
よろよろ歩き出す
曖昧な記憶
傷つけたことになっている
誰かの背中は
排水溝に逃げ込んで
待ちくたびれた公園の
ベンチに刻んだ魔方陣は
消えかけている
優しげな面立ちの
雨の温度にほだされて
お喋りになっていく意識が
鬱陶しくて
仕方がなかったから
真一文字を口にくわえて
足を速めた
自分がやたらに
咲いてしまわないように
戻る 編 削 Point(25)