あたたかい雨/nonya
 

生温いラブソング
みたいな雨が
無骨な傘を叩く

手頃なセンチメンタル
みたいな歌が
鳥肌にまといつく

南風に押されるままに
よろよろ歩き出す
曖昧な記憶

傷つけたことになっている
誰かの背中は
排水溝に逃げ込んで

待ちくたびれた公園の
ベンチに刻んだ魔方陣は
消えかけている

優しげな面立ちの
雨の温度にほだされて
お喋りになっていく意識が

鬱陶しくて
仕方がなかったから
真一文字を口にくわえて
足を速めた

自分がやたらに
咲いてしまわないように



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