object/水町綜助
 



あのあと
春へ向かった傷あとが
まだ桜色なので
熱をもって
おぼつかない
唇の舐めかたが
やさしいのか
つめたいのか
この生暖かな季節ににた
この体温が強く
開くかもしれない
縦筋のくち



一匹の

晴天の下で抱かれた
鳴き声は高らかに
高らかに三階から
天井の空を見上げるように
しろいのどもとを晒し
水溜まりのように
春の青に溶け込んで
もう行き先がわからなくて
遥か、という言葉が
身に
つまされるように



「いきてしまった」
その言葉
それぞれの母音に綴じられた
点と点
そのあいだ、
指で開くとは
[次のページ]
戻る   Point(3)