はやも若葉の盛り/木原東子
敷をのぞく
はらわたのごとく溢るる
家具食器
ありすぎるほどの廃屋悲しまる
救いはありて
おのずと生るる生命は
血気盛んのどくだみを
大葉になして敷き詰めて
今しもかかぐ蕾数々
白きその十字の花を
待つ心 明日はも満たさる
うちに無き赤き花ある
ひとの庭
失敬したきも我慢する
静まり返った公園に
ノンくんと遊びたる夏
もうひと月も会えぬ孫
無事で元気であろうはず
花を見て充たされをればいいものを
何故に文字にて再現したがる
写真や絵でもいいものを
まあ許せ
おのれの日常こもごもの
抱く思いを形見とて
遺すつもりまでなくも
こんなことする
それも人なる
猫はさかる
烏は脅したり甘えたり
雀は砂浴び
人は野菜を育てる
こりゃいつまでも
終わらぬ作詩
ゲーテでも読まむ
ならば止まむ
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