はやも若葉の盛り/木原東子
他人用に仮初めの
住まいたらむと建てられし
小さき貸家のうらぶれて
濁り空気を抱え居る
廻りには山の賑わい
野生のケシの群れ咲きて
薄オレンジ色に
人棲まぬ
家を包みていっせいに
そよぎているは哀しき眺め
はたまた楽し
早緑の八つ手の茂り
勢いの過ぎたるせいか
剪定されたるその横に
麗しき桃色の大輪の
黄金の芯の
芍薬ふたつどっしりと
麗しき若葉撓らせ
思う存分開花あり
おばあさんが
既成の規制破りえぬ
へなちょこの詩句案じつつ
着慣れぬに
チュニックなどでふらふらと
コンビニまでを
皐月の盛り
血気盛んの夢の跡
崩れたる屋敷を
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