おかしな人/岡部淳太郎
私はもうすっかり
おかしな人になって
それからずいぶんになる
何しろいろいろあったり
あるいはなかったりしたのだから
無理もない
夜中に煙草が切れた
もういまやこれだけで
おかしな人と認められるには充分だ
そんな時代になってしまった
いまや大きすぎる権力から
職務質問を受けるのにも
すっかり慣れてしまった
それぐらいに私はおかしい
あまりにおかしすぎて
冗談ではないかと思って
笑いだしたくなるぐらいだ
だがそうしてしまうとますます
おかしな人になってしまうので
笑いをむりやり欠伸に変えて
ごまかすことにする
それもまた
おかしなことだ
おかしな人と思わ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)